カテゴリ: 読書
ハチはなぜ大量死したのか
6月 21st, 2009へんな古代生物/擬態する装丁
12月 3rd, 2008
「へんな古代生物」という本を購入して読んだ。「へんないきもの」シリーズもネタ切れで古い時代に注目したか、と、読み進めたが、どうも文章に違和感がある。
見開きで1生物をイラストとともに紹介するパターンは同じなのだが、いちいち文章にオチをつけようという努力が空回りしている感が否めない。下ネタや芸能ネタだから悪い、という訳ではないが、その生物に対する『驚き』や『おもしろがり』と関係ない所でオチを付けられて興醒めしてしまうだけだ。

あー、なんと、これ、筆者も出版社も違うではないか。ビビットな単色の表紙、グレースケールのイラスト、スミで明朝のタイトル。帯までそっくりだが、「へんないきもの」とは違うシリーズだったのだ。
この筆者は「へんな古代生物」の前に「毒のいきもの」という本を出している。「インスパイアードさん」なのだろう。それにしても「へんな古代生物」の装丁に至っては、もはや『擬態』である。「へんないきもの」以降に出版された「柳の下」本の中でも傑出したそっくりさ加減だ。
ただし、一度、見破ってしまうと、『擬態』には滑稽さがある。懸命に蛇の真似をする蛾の幼虫とか、枝の振りをし続けるナナフシとかの映像を見るときに感じる「バレてるって」と言いたくなるあの感じだ。
そんな訳で、是とも、書店でその擬態ぶりをウォッチしてしてもらいたい一冊(購入は自己責任でどうぞ)。
目薬αで殺菌します/叙述トリックの快楽について
9月 20th, 2008
今回の「目薬αで殺菌します」は3冊のXシリーズを挟んでちょっと久しぶりのGシリーズ。キャラ読み派の方々にも、いくつかのサービスがありましたよ。
新刊が出ているのを発見すると、ほぼ迷わずに買う作家が何人かいる。森博嗣はその内の1人で、わずかに買っていないのはBlog本、庭園鉄道関係、絵本関係などの何冊かがある程度。
森博嗣のミステリは、その叙述トリックが好きなのだが、シリーズを通した叙述トリックもあったりするので、新刊を買っていると全読者参加の謎解き大会に参加している気分になるのも楽しい。Gシリーズで言えば、赤柳氏の正体が私にはまだ分からない。
ミステリという小説のジャンルには、作者から読者に対して出題されるパズルとしての側面がある。叙述トリックは、登場人物の同士の知恵比べに終始するその他のミステリよりも、この「作者からのパズル」という意味の純度が高いのが好きな理由かもしれない。
ミステリの物語構造を単純化するなら、「探偵」が「一般人や既存の捜査機関(警察など)」が解決できない(または存在にすら気づいていない)犯罪に対して、その謎や秘密を「非凡な才能で」解き明かす、というのが基本になる。
「探偵」のバリエーションは職業探偵の場合もあれば、はみ出し刑事だったり、美人の鑑識だったり、温泉好きの木の実ナナと裸が好きな古谷一行だったりする。「非凡な才能」も虫眼鏡(観察力)や灰色の脳細胞(洞察力)から始まり、家政婦という立場を悪用した立ち聞き・盗み見まで、多岐にわたるが、この「非凡な才能」の発現こそがミステリを読むカタルシスの根源であり、その意味ではスポーツ観戦でスーパープレイを見た時に興奮するのと同じ部分の脳細胞が興奮しているのではないか、というのは私の仮説だ。つまり、決して自分には出来ないことを確認しつつ、観客や読者は、その才能に対して喝采を贈る。
ところが、叙述トリックの場合は、登場人物間での知恵比べとは別のレイヤーで作者が読者を騙そうとするので、読了後に一本取られた感が強く残る。前提や思い込みを覆された時のポカーンな感じは、新しい事を知ったり、仕事や勉強や運動のツボをつかんだ時の感じに近い。新しいシナプス経路がモリモリと太く繋がっていくような快感がある。
さて、参考にもう一冊ご紹介。不可能を可能にする探偵の才能を、神からの贈り物だとすれば、そこに神の意志を見ることができる。ミステリの謎解き要素は、その不可能性のセッティングの装置である、といった趣旨の分析がミステリの深層―名探偵の思考・神学の思考でも触れられていたが、ちょっと冗長な感じで、ちゃんと理解できていないかも。
のぼうの城/忍びの国
8月 31st, 2008虚空の旅人
8月 3rd, 2008
上橋菜保子の守人シリーズ第4弾。このシリーズを読み始めたのはアニメの「精霊の守人」を見てからだ。
アニメの出来も素晴らしかったが、それ以上に小説も面白い。日本人の書いたファンタジーでありながら、水戸黄門や大魔神の様な時代劇ではなく、西洋風の剣と魔法でもない、オリジナルの世界を描いており、それでいてなお、出自が日本である「雅」を感じさせる。
構築された舞台設定の中で活躍する人物達も魅力的で、ストーリーの娯楽性にも富んでいるのだから文句が無い。強いて物足りない点を挙げるなら、善人しかでてこない所か。敵対するのが「事情が合って襲ってくる人」か「小心なので良いことができない人」ばかりで、魅力的な『悪人』が登場しない感がある。とはいえ、それも一つの世界の解釈だし、あからさまな悪役のいないことが、絵空事に短絡しない理由なのだろう。
ただし、本作には関係ないが、小谷真理の解説はちょっと頂けない。フェミニズム視点で語るのが芸風なので仕方ないのだろうが、その文脈だけで分析してしまってはもったいないと思う。フェミ視点で解説するのに、なぜ「ゲド戦記」のル=グインと比較しないのか?第2作目で地下迷路を徘徊するというオマージュまで見せているのになあ。


